飽くなき好奇心から生まれる唯一無二の作品

木目を思わせる縞の文様、やわらかな輪郭、心地良い手触り。陶芸家・片山亜紀(かたやまあき)さんの作品は、土とは思えないやわらかな雰囲気と凛とした強さを感じます。作品が生まれるアトリエと常設展示しているギャラリーを訪ねました。

自然に囲まれたアトリエで、土と向き合う創作時間

本郷町善入寺の高台、自然に囲まれた閑静な場所に片山さんのアトリエがあります。田舎のおばあちゃんの家を思わせる古民家を訪れると、「ここで作品を作っているんです」と離れの一室に案内してくれました。窓の外には緑豊かな山々の風景が広がり、時には心地良い風も入ってくるそうです。BGMは野鳥や虫の声?と思いきや、「いつもポッドキャストや、お気に入りのラジオ番組を聴きながら作業しています」と笑いながら話してくれました。

作業の様子を見せてもらうと、粘土の塊のようなものを黙々と削っていきます。陶芸でよく見る、ろくろを使って成形するわけでもないし、手びねりとも違います。「これはたたらと呼ばれる板状の粘土と色化粧土を何重にも重ねて一つの塊を作り、その塊を器などの形に削り出す『積層刳貫手(せきそうくりぬきて)』という技法です。」と説明してくれました。

「今行なっているのは、塊をカンナで削っているところ。ひたすら手で形を作っていく作業が続きます」。練り込みや練り上げというのは従来からある技法ですが、積層刳貫手は片山さんが考案したオリジナルの技法だそうです。削り出す粘土の量が圧倒的に多く、重ねた色粘土のうち作品になるのはほんの一部、聞いているこちらがクラッとするぐらいの作業です。「時間も手間もかかるし、大量に粘土を削る無駄の多いやり方だから、他の人は思いついてもなかなかやらないかもしれませんね。同業の人からは、よくやるねーって言われます(笑)」。

もともと細々とした作業が好きで、とことん自分のペースでゆっくりと作る方がワクワクするという片山さん。「電動ろくろのスピード感があまり得意ではなくて、一つずつ形を考えながら、時間をかけて作っていく方が自分には合っているみたいです」。と楽しそうに話します。

留学中にきっかけをもらい芸術の道へ

「幼い頃から、絵を描いたり、泥遊びをしたり、色水を作ったりと、手遊びが好きな子どもでした。でも芸大に行こう、芸術の道に進もうとは考えなかったですね。姉を含め、同級生など周りにもっと上手な人がいましたから」。片山さんの父親は、陶芸家の片山雅昭さん。「父は『ものづくりはいいぞ』とは言っていましたが、私や姉妹に『陶芸をやってほしい』『自分の後を継いでほしい』と言うことはありませんでした。真逆で『世界は広いんだからどこへでも行って好きなことをしたらいい』という人でした」。

片山さんが陶芸の道に進んだきっかけの一つは、留学中にありました。 「中学・高校の頃は英語が好きで、語学に興味があり、高2の時に10カ月ほどオーストラリアに留学しました。日本の私が通っていた学校では美術の授業中には決められた課題を終わらせなくてはいけなくて、時間のかかる私はいつも急いで完成させる事ばかりに必死で、でもそういうものなのだと思っていたんです。現地の美術の授業では、自ら決めた課題を家にも持ち帰って納得がいくまでじっくり描くことがすすめられました。そして美術の先生が、その時の作品をものすごく褒めてくれて『芸大を目指したら?』と言ってもらい、『じっくり取り組んでいいことなんだと』と意識するようになりました」。日本に戻り、ギリギリまで語学か美術かで悩んだそうですが、最終的に選んだのは京都市立芸術大学への進学。2年生からは陶磁器を専攻しました。「その時、なんだかんだで父が喜んでいたのを覚えています」。

大学卒業後は、京都でアルバイトをしながら作陶する生活が続きました。20代後半までは作品づくりに欠かせない窯のある家を転々としながら、自分の作風を模索する日々。転機となったのは、アルバイトをしていたギャラリーで行われた企画展でした。「オーナーさんが私と油絵をやっているもう一人の子に『せっかくだから二人も作品を出してみたら?』と声をかけてくれて。久しぶりにゆっくりと時間をかけて作品と向き合えることになり、この時に初めて現在の技法の元となる土の塊に挑戦しました」。

新たな作風と出合い、陶芸家としての道を歩んでいった片山さん。35歳を過ぎ、「そろそろ、どこかに拠点を構えたい。三原に帰るのもありかもな」とぼんやり考えていた矢先、2018年にお父さまの病気が発覚します。そしてその年の6月、39歳の時に三原へ帰郷。「急なことでしたが、その頃にはどの場所でやっても大丈夫という気持ちがあったので、不安はなかったですね。生まれも育ちも山の中だったので自然に囲まれた環境で作品を作るのもいいかなぁと」。

 

陶芸は日々、実験。試行錯誤が面白い

取材中、何度も出てきたのが「実験」という言葉。「現在の技法に辿り着く前、まず考えたのが、何か面白い塊を作れないかということ。色を挟んでみよう、粘土を重ねてみようって、実験するように思いついたことを繰り返し試していきました」と表現する片山さん。「工芸全般にいえることですが、日々、実験をしている感じなんです。例えば、土化粧をかぶせる割合を少し変えるだけ、焼成温度を3℃上げるだけで、焼き上がりが変わってきますし、土の軟らかさによって自分が意図していない形になることもあります。その実験結果を見てもらう場が個展になるのかな」。思うようにいかない、そんなもどかしいところも魅力的で興味がつきないと目を輝かせます。

「きれいなかたち、不思議な模様などが好きですね。魅力的だなぁと思った物をじっと眺めたり、集めたりしています。出来上がった器を見ると、木の実や石の曲線を思わせるような自然の中のものであることが多いかもしれません」。幼少の時から過ごしてきた三原の自然の中の美しいものが自分の中に心地良く残り続けていることに気付くと言います。好奇心を持ち続け何度も実験し、納得がいくまで作品作りに取り組む片山さん。迷いなく『好き』を追求する潔さと強さを感じました。

手前と左奥は浮城窯、片山雅昭作品

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(担当窓口:三原市経営企画部広報戦略課)
片山亜紀(かたやまあき)(陶芸家)
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